ポスト渋谷系にみる、音ゲー楽曲と邦楽シーンの影響関係(前半)

梅ラボ氏がtwitterでなにげなく紹介した2つの記事。
「【アニソン】アキバ系×渋谷系=名曲の宝庫! “アキシブ系”厳選オススメ楽曲6」
http://ure.pia.co.jp/articles/-/33118
渋谷系と声優とレーベルの話」
http://aoicat.hatenablog.com/entry/2014/09/02/230029


僕は邦楽史とか渋谷系に通じているわけでもないし、アニソンをハードに聴きかじるオタでも、ボカロムーヴメントを追い続けるボカロファンでもない。音ゲーも、10年以上やってるとはいえ下手っぴである。
とはいえ現代の音楽史みたいなものが語られるとき、あまりに「音ゲー楽曲」が過小評価されているのを見かけて、とってもモヤモヤしてきた。


上記記事は渋谷系とアニソン・声優ソングを中心とした話ではあったが、今回は渋谷系音ゲー楽曲という分野の中で独自に熟成しており、それがその外と相互に影響しているのではないか、という"過剰評価”をしてみたくなったので、この文章を書いている。
文章の拙さは評論家でもライターでもないのでご愛嬌。邦楽と音ゲーの広くややこしい地図を少しでも見通しよくしていきたいと思います。
そしてツッコミをお待ちしています。




>>>>ネオ渋谷系の話

ポスト渋谷系について言及するならば、見逃してはいけない「ネオ渋谷系」。しかし上記2つの記事ではあまり触れられず、話が広がり過ぎないようにという自制とはいえ僕は違和感が残る。
ネオ渋谷系とは、渋谷系に影響を受けた2000年代前半のミュージシャンたちに適用されたカテゴライズ。
ネオ渋谷系の重要アーティストcapsule中田ヤスタカ)の楽曲を聴けば分かるように、「ピコピコ」サウンドが目立つ「レトロ」+「フューチャー」感あるエレクトロポップ群が、ネオ渋谷系の一つの流れとして存在する。
おそらくピチカート・ファイヴ小西康陽)のダンスポップの比重が大きくなって進化したということなのだろうけど、中田ヤスタカがcapsleを経てPerfumeをプロデュースしていくことを考えると、元祖渋谷系の観点からはたしかに言及しづらいベクトルなのかもしれない。
ピチカート・ファイヴ「東京は夜の7時」

capsuleポータブル空港




>>ウサギチャンレコーズという支流

ネオ渋谷系の支流を語るのに欠かしてはいけないひとつのレーベルが、もはや伝説の「ウサギチャン・レコーズ」。更新が停止して久しい公式サイトには「USAGI-CHANG RECORDSは高速打ち込みユニットSOCOPO等の活動をしてきたAKIRA SUZUKIが運営するエレクトロ・インディーポップレーベルです。」とある。
http://www.usagi-chang.com/


ウサギチャンレコーズエイプリルズYMCKの初期リリース元となったほか、コンピレーションではPlus-Tech Squeeze BoxHazel Nuts Chocolateを紹介しており、一部のエレクトロポップファンには名が知れているのでは。と思っていたのだが、改めて見てみると活動歴があまりに短い気もする。単に僕の青春だった、というだけであろうか…(汗
個人的にはハードなノイズサウンドとウィスパーボイスを組み合わせたmacdonald duck eclairなども渋谷系極地として注視したい。
上記webサイトでぜひ試聴していただきたい。


エイプリルズ 「キ・ラ・メ・キ・ムーンダイバー」

ハニーボイスなどは渋谷系譲りだが、世界観は未来志向。「フューチャー」を歌う。
YMCK 「Magical 8bit Tour」

8bitサウンドのポップスでは有名なYMCK。興味深いのは最近この両者ともにmaimaiやグルーヴコースター等の最新音ゲーに楽曲を提供している点。
Plus-Tech Squeeze Box 「early RISER」

「Dough-Nuts Town's Map」


PSBはハヤシベトモノリを中心とした音楽ユニットであり、2ndアルバム「CARTOOM!」は9人のボーカルを迎え4500種以上のサンプリングで構築されている(インタビューによると歌詞もアメコミの切り貼り)という化け物のような内容で、僕の永遠の名盤である。中田ヤスタカと双璧をなすほどの実力者だと思っているが、最近は表立って名前を聞かない。重要なインタビューのwebサイトも消えてしまった。このごろ「スペースダンディ」の劇中音楽を手がけたりしたんですね、知らなんだ。
ポップンミュージックには「BABY P」(ジャンル名:パニックポップ)を提供している。


こうして振り返ると、「渋谷系」の派生だから当然とはいえ、"未来都市トーキョー"をプッシュしまくる曲が多い。
2000年代初頭の、浮かれ気分が渋谷系のアップデートを促したのだろうか。
石岡良治氏の『視覚文化超講義』で触れられている「ノスタルジアの問題」に関係するかもしれない。
capsuleは「レトロメモリー」という三丁目の夕日的な曲を残しているし…。



そして渋谷系音ゲーといえば、家庭用beatmaniaにおいて2001年、小西康陽は実際「beatmania THE SOUND OF TOKYO!」をプロデュースしている。こちらも伝説的ゲームなので、抑えておくべきだろう。
小西康陽「ビートの達人」




ざっくりとネオ渋谷系という進化系についてツマんで紹介したが、次の記事では「pop’n musicに流れる渋谷系の血」「サウンドディレクターwac」などを紹介し、音ゲー楽曲のいち側面を振り返ってみたいと思う。
今回はここまで。


>>次の記事へ
※2015年4月7日、一部リンク追加等の修正をしました。